著者:ひまわり
こんな方にこの記事が役立ちます
・マレーシアへの赴任が決まり、治安についての不安を抱えている方
・子連れでの海外生活で、どこまで気をつければいいのか知りたい方
・家族の安全確保をどうしたらいいのか肌感覚や実体験を知りたい方
・万が一、盗難に遭ったときにどう動けばいいのかを、知っておきたい方
マレーシア赴任が決まったとき、わが家がいちばん気にしたのは治安、とりわけ子供の安全確保でした。
ネットで検索すると、「マレーシアは東南アジアの中では比較的安全なほう」や「スリや置き引きが多い」などといった記述が出てきます。どちらも本当なのですが、赴任前のわたしには海外で生活した経験はなく、具体的にどのような対応をしたらいいのかよく分かりませんでした。
クアラルンプールで3年間家族で暮らして感じた結論ですが、私は駐在中にスリの被害に一度遭いました。ただ、それ以降、二度目の被害や危険な目に遭うことはありませんでした。
この記事は、スリの被害にあった経験と、それをきっかけに変えた習慣、そして子どもと暮らすうえで気をつけていたことを実体験に基づき記載します。
なお、本記事はあくまでも個人の体験記であり、マレーシアで生活する上での安全情報や防犯対策については、外務省海外安全ホームページなどで最新の情報を把握するようにして下さい。
結論|備えれば、必要以上に怖がらなくていい
3年暮らして、強く感じたのはこれです。
マレーシアは、日本と比べればスリなどの犯罪に遭うリスクは高いと感じます。実際、日本人の知り合いの方で財布やスマートフォンの盗難の被害に遭ったという話を聞く機会は少なくありませんでした。
ただ、一度被害に遭った方で、二度目の被害に遭ったという方はお見かけしなかったです(個人の知り合いの範囲内での話です。)。
一度被害に遭われた方は、みなさん、財布は体の前で抱えて持つようになったり、スマートフォンに頑強な盗難防止ストラップをつけたりと、かなり気をつけるようにされていました。そしてそれが二度目の被害を防ぐことができていた要因のように見受けられます。
つまり、しっかりと対策をすれば相当の部分は防げるとわたしは受け止めています。だからこそ、具体的な備えをすれば、必要以上には怖がらなくて良いと感じました。
3年のうち一度だけ、スリの被害に遭いました
私は約3年間の滞在中一度だけスリの被害にあったことがあり、その時の経験と対応、その後の対策についてお伝えしたいと思います。
気づかぬうちにリュックから財布が盗られていた
被害に遭ったのは、マレーシアに渡航してから1ヶ月程度とまだ日が浅い時期でした。
その日は子どもたちと出かけていて、LRT(都市鉄道)を使ってショッピングモールに出かけていました。自宅に戻ってリュックを見たら、財布を入れていた小さいポケットのチャックが空いており、嫌な予感がして中を見ると、そこに入れていた財布がありませんでした。
家に戻るまで全く気づかず、どこで盗られたのかは分かりません。
行動を思い返してみると、子供達と一緒だったので、モールにいる間、駅にいる間、LRTに乗っている間などにはぐれないようにと、注意は子供達に向いていました。おそらく子供達に注意が向いており、背中のリュックには気が入ってなかった隙を狙われたのだと思います。完全にわたしの不注意でした。
財布には、クレジットカード、デビットカード、キャッシュカード、現金が入っていました。不幸中の幸いだったのは、盗られたのは財布だけで、パスポートはリュックの別のポケットに入れていたため無事でした。

カード停止手続き
気づいてすぐ、カード会社に電話して停止の手続きを取りましたが、カード会社から身に覚えのない買い物がなされていることを聞き、すでに不正利用は始まっていることを知りました。なお、最初はコンビニで少額の商品が購入され、カードが使える状態であることを確認し、その後、高額な商品を購入すると入った流れで不正利用がされていました。
反省点
財布盗難被害に遭って感じた大きな反省点が2つあります。
1点目は、背負っていたリュックに財布を入れていたことです。思い返すと余りにも意識が甘かったですが、目の届かないところに貴重品を入れて携行するのは、余りに無防備だったと思っています。
2点目は、カードを複数枚携行していたことです。この経験で主要カードのほとんどを一気に失ってしまってました。また、カード停止手続きにはそれなりに時間を要し、1つのカードの停止手続きをしている最中に他のカードで不正利用が進んでいました。携行する貴重品は必要最小限にすべきと痛感しました。
なお、大使館の「安全の手引き」にモールや車内などの混み合うところでリュックサックなどから財布を盗られる事案がある旨記載されていますが、私のケースはまさに典型例と言えるものでした。
そして対策として「混み合う場所では、バッグは体の前に抱えて持つ」と記載されていますが、これ以降、私は体の前に抱えるタイプの貴重品バックを購入し、常に体の前方の目の届くところで貴重品を携行するようにしました。それ以降の滞在期間中、再度被害に遭うことはありませんでした。
ポリス・レポート(被害届)の発行
ここからは、実際に警察で行なった手続きについての記録です。
ポリス・レポートはなぜ必要なのか
盗難に遭ったら、被害にあった事実を警察に届け出て、ポリス・レポート(被害届)を作成してもらう必要があります。ポリス・レポートは、補償の請求に必要であるほか、パスポートが盗まれた場合には再発行の際にも必要になります。
ちなみにわが家のケースでは、どこで盗られたのか分かりませんでしたので、居住地の最寄りの警察署に行きました。被害に遭った場所が分かっていれば、そこを管轄する警察に届け出ということになろうかと思います。
警察署への持ち物、聞かれたこと
警察署へ持ち込んだのは、身分証としてのパスポートのみです。なお、署では次のようなことを聞かれました。
- 氏名、職業、住所などの基本情報
- どうやって被害に気づいたか
- その日の動線(被害にあった場所が明確でなかったためその日の行動を聞かれました。)
- 被害の具体的な内容と金額
クレジットカードの不正利用については、その時点では被害額が確定していなかったため、後日、明細を別途送りました。
費用はRM2、即日発行
私のケースでは、ポリス・レポートは即日発行してもらえました。費用はRM2です。
なお、記載言語は英語でした。カード会社へ写しを送りましたが(後述)、英語であったからか翻訳を求められることはなく、そこは楽に感じました。
警察で英語は通じる?
わたしの場合、対応してくださった警察官は英語を話すことができ、英語で手続きができました。
ただ、滞在中にスリにあったことがある他の日本人の方から話を伺ったことがありあますが、その方を担当した警察官はあまり英語が話せなかったそうです。どうも「警察署であればどこでも英語が通じる」とは言えないようです。
警察署で一度追い返された話
今回のスリの被害で最初に警察署に行った際、実は一度追い返されています。余談ですが、自分の中では強烈に記憶に残った経験であるため、そちらも書きたいと思います。
被害にあった時期ですが、その頃はラマダン(断食月)の最中であり、警察署に行ったのは日没後間もない時間帯でした。
盗難被害に遭った旨を申し出たところ、警察官から、イフタール(ラマダン期間中、日没後に摂る食事)中で対応できないので、出直すようにと言われました。渡航してからまだ日が浅かった私は「イフタール」という単語の意味が分からず、訳が分からなかったのですが、奥で警察官の方々が食事をとっている様子を見て理解しました。
その後、2時間ほど時間を空けて再訪したところ、食事は終わっており、対応いただきポリス・レポートも無事に発行してもらえました。
「全く違う文化圏に来たんだな」と切に実感した出来事でした。
補償について
不正利用の補償については、クレジットカード会社から受けることができました。
カード会社宛に、ポリス・レポートの写しを添付して保証金請求書を送付する手続きを行い、結果として、不正利用された分は全額補償されました。一方で、財布に入っていた現金は諦めました。
二度目がなかった理由
一度被害に遭ったことで、わが家は抜本的に意識が変わりました。
貴重品については、体の前にかけるタイプの貴重品バッグを購入し、必ずそこに入れて、いかなるときも体の前で抱えて持つようにしました。
そして、カード・現金の携行は必要最小限にしました。
たったこれだけのことですが徹底し、これ以降、帰国までスリの被害に遭うことはありませんでした。

子どもと暮らすうえで気をつけたこと
また、スリ被害に遭ったことで、家族の安全対策についてもより強く意識するようになりました。我が家が意識してきたことを記します。
とにかく、子どもから目を離さない
基本的なことですが、いちばん重要なのはこれだと思っています。
昼夜を問わず、出かける際には子ども達からは常に目を離さないようにしていました。特に駅や繁華街など人通りの多い場所では、必ず手をつないで、はぐれないようにしました。
なお、外務省の海外安全ホームページによれば、マレーシアでは未成年を対象とした誘拐事件が年に数回発生しており、日本人が巻き込まれた事案もあります。
特別な警戒をしていることを示すことで、ターゲットとなることを回避できる可能性は高まるため、警戒は怠らないようにしました。
GPS端末の携行(ただし機種選びには反省も)
外出時(通学時を含め)、子どもたちにはGPS端末を持たせていました。
ちなみにわが家が使っていたのは、現地で調達したスマートウォッチ型の端末です。Lazada(大手ECサイト)で子ども用のものを2つ購入し、SIMはMaxisで契約しました。通信費は2人分で月額RM160程度でした。
持たせたこと自体は、有用だったと思っています。
学校に行っている時も含めて、子供の現在地が常に把握できることは大変よかったです。スクールバスのピックアップの際も子供のリアルタイムの位置が分かるため、オンタイムで迎えに行くことができるなど役立ちました。また、発動の機会はありませんでしたが、通話機能があったため、子供と逸れてしまっても連絡が取れるという安心感がありました。
ただ、端末の選定には反省もありました。
一つは、スマートウォッチ型の端末を現地で着けている子供をほとんど見かけなかったことです。持たせることで、かえって目立ってしまったなと感じています。
もう一つは、通話機能があることで、知らない番号からの着信が結構来ることです。子どもたちには「親の番号以外は絶対に出ないように」と伝えていて、実際に出ることはありませんでしたが、度々かかってくる着信は正直ストレスでした。
知らない番号からの着信は、詐欺の入口にもなり得るため、ないに越したことはないと感じています。そういった観点から、端末の選定には別の選択肢もあったなと感じています。(結果としては、何事もありませんでしたが。)
ちなみに帰国後、わが家ではみてねみまもりGPSを持たせています。こちらは通話機能のないタイプですが(音声の録音・送信・再生機能はあります。)、スマートウォッチタイプのように目立たず、知らない番号からの着信も来ないので、今はこちらのほうが使いやすいと感じています。同じような端末が現地で手に入るかは確認していませんが、割と使い勝手は良いなと感じています。
スクールバスのピックアップ
スクールバスでの帰宅時のピックアップは毎回、親が迎えに行っていました。
学校からも親がピックアップするように求められておりましたが、3年間の駐在中、親が不在で子供だけてスクールバスを降りることは一度もありませんでした。なお、雨天時など、バスの到着が相当遅れることが度々ありましたが、子供達にGPS端末を持たせていたため、ちょうど良いタイミングで迎えに行くことができました。

夜間の外出について
夜間に家族で出かけること自体は、特段控えていませんでした。
車やGrabで飲食店やモールへ直行する場合、あるいはKLCCやモントキアラのような人通りの多いエリアであれば、特に避けることはしませんでした(目を離さない、手を繋ぐなどの対応はしました)。
一方で、人通りの少ない場所、外国人があまり行かない場所には、夜間に家族で行くことはありませんでした。そもそも用事もないので、大人だけで行くことも余りなかったです。
コンドミニアムは安全?
コンドの安全対策
わが家が住んでいたコンドミニアムでは、ガードハウスが24時間稼働していて、来訪者を管理していました(そのようなところに住まわれている駐在員の方は多いかと思います)。また、外部の方が来訪(徒歩・車)する際には、居住者が発行したQRコードが必要で、それなりにしっかりと管理されていたと思います。
さらに、棟に入るにはカードキーが必要で、エレベーターを利用するのもカードキーが必要でした。二重、三重の対策をしている構造です。
そのような環境の中で住んでおり、コンドミニアムの中で自分や子どもの身に危険を感じたことは一度もありませんでした。
不安に感じるところも
一方で、完全に安心できたかというと、そうではありません。
たとえば、Grabの車です。ピックアップやドロップオフであることをガードハウスに伝えると、Grabの場合は事前登録がない車でも割と簡単にゲートを開けていました。
二重、三重のセキュリティの仕組みがあっても、実際の運用には穴があると感じていたため、たとえコンドミニアムの中でも気を抜かず、子どもから目を離さないようにしていました。
また、子供の安全対策とは異なりますが、我が家で業者に部屋のクリーニングを依頼したところ、クリーニング業者に目の前で洗剤を盗まれるといったことがありました。(詳しくは、マレーシアのコンドミニアム暮らしのリアルを参照ください。)業者含めて全く油断できず、たとえコンドの敷地内でも警戒を怠らないようにする必要があると感じました。
大使館からのお知らせは役に立ちました
在留届を提出しメールアドレスを登録すると、大使館からお知らせを受けれるようになります。例えば、治安・安全対策に関しては、以下のような情報が配信されていましたが、これらは我が家の安全対策に活用しました。
- スリの主な被害場所
- 各種の詐欺被害(日本円を見せてほしいと持ちかける手口など)
- 違法薬物の運び屋にされてしまう事案
- 女性に対する性的暴行への注意喚起
- デモに関する情報(中東情勢を踏まえた米国大使館前でのデモなど)
また、安全情報だけではなく、日本の教科書の無償配布事業の案内や、国政選挙(在外投票)の案内も届くため、お知らせは有用に感じました。
マレーシアの政情について
マレーシア滞在中、政治基盤の不安定な政権があったり、選挙による政権の組み替えといった動きを目の当たりにしました。ただ、政治が不安定な時もありましたが、あくまで民主主義の枠内での出来事であり、政治の混乱により身の危険を感じるといったことはありませんでした。民主主義による政治体制自体は、機能していると感じました。
まとめ|振り返って
スリ被害の経験や3年間の滞在を振り返って、安全対策について重要だと思ったことをまとめます。
- スリのリスクは日本より高い:貴重品を体の前に抱えて持ち、目を離さないという習慣で、リスクは大きく減らせます。
- カード・現金は必要最小限だけ持ち歩く:一度に複数失うとショックはより大きく、また、カード止める作業に時間を取られ、その間にも被害は進みます
- 盗難等の被害に遭ったら警察署でポリス・レポートの取得を:補償の請求手続き等で必要になります。費用はRM2、英文版を即日発行してもらいました。(警察署で英語が通じるとは限らないことに留意。)
- 子どもからは目を離さない:GPS端末の携行は色々と有用でした。ただし、通話できるタイプは、知らない番号から着信が来ることに留意。
- コンドミニアムの中でも気を抜かない:一見、警備は堅く見えても油断はできません。出入する業者にも要注意。
- 在留届を出して、大使館の案内を受け取る:色々と有用な情報が届きます。
スリの被害に遭った時は相当落ち込みましたが、いま振り返ると、その一度の経験で安全に対する考え方を変えたことが、その後の約3年間を無事に過ごせた要因であると思っています。
本記事が、すでに海外に滞在されている方、そしてこれから赴任される方にとって、安全対策の備えの手がかりになれば幸いです。
本記事はわが家の滞在当時(3年間)の経験に基づく記録です。地域・時期によって事情は異なります。渡航前・滞在中は、必ず外務省 海外安全ホームページ等の最新情報をご確認ください。

