マレーシアの医療・病院事情|駐在3年・家族で利用したリアル

転勤(海外)

著者:ひまわり

こんな方にこの記事が役立ちます
・マレーシア赴任が決まり、現地の医療体制が不安な方
・日本語が通じる病院・クリニックを知りたい方
・子どもの急な発熱・けがにどう備えるか知りたい方
・海外赴任保険や救急対応の準備を知りたい方

海外赴任で、家族の健康・医療は最大級の不安ごとだと思います。特に小さな子どもがいれば、なおさらです。

わが家も同じでした。でも先に結論をお伝えすると——約3年間のクアラルンプールでの滞在で、家族合計20回ほど病院にかかり、入院も経験しましたが、医療面で困ったことは一度もありませんでした。クアラルンプールの医療は、日本と比較しても遜色ないと感じられるほど充実しています。

この記事では、マレーシアの医療システムの基本、絶対に知っておくべき救急車の話、わが家が実際に利用した日本語対応の病院、子どもの入院体験、保険の備えまで、実体験ベースでお伝えします。

※本記事はわが家の体験に基づく個人の記録です。医療機関の受診判断はご自身の状況に応じて行い、医療体制・連絡先などの最新情報は、必ず各医療機関や外務省などの公式情報でご確認ください。

マレーシアの医療システム|基本を押さえる

まず前提として、マレーシアには日本のような公的医療保険制度はなく、自由診療のみです。

病院は大きく私立と国立・公立に分かれます。駐在員が利用するのは基本的に私立病院です。私立病院は非常に綺麗であり、設備も整っており日本の水準と比べても遜色ありません。一方、国立・公立病院は安価ですが、設備・医師の数・技術面で見劣りすると聞いており、わが家も3年間で私立病院しか利用しませんでした。

私立と国公立の格差はかなり大きいと聞きます。大きな私立病院は高級ホテルのような雰囲気のところが多く、初めて訪れたときは驚きました。そのぶん、私立病院の医療費は高めです。

費用感の一例として、子どもの風邪でクリニックを受診した際は、診察・薬込みでRM200程度でした(再診の場合。初診は別途初診料等がかかります。価格は当時のものであり、また、診察・検査・薬の内容にもよるため、あくまで参考値です)。日本とは異なり、3割の窓口負担で保険診療が受けれる訳ではなく、自由診療で全額負担する必要があることから、医療費の負担額は日本と比べるとかなり高めです。だからこそ、後述する保険の備えが必要になります。

【最重要】救急車は「999」ではなく、私立病院の番号を控える

救急車の利用についてですが、日本の119に当たるマレーシアの緊急番号は999ですが、999で救急車を呼ぶと、国立・公立病院に搬送されます

私立病院は、それぞれ独自に救急車を持っています。いざという時に私立病院へ搬送してもらうためには、私立病院の救急車の直通番号を、事前に控えておくことが必須です。1つではなく、複数の病院の番号を把握しておくことをおすすめします。

赴任したら、自宅から近い私立病院の救急番号を調べて、家族で共有し、スマホなどに控えておくことが重要です。

なお、我が家では、幸い約3年間の駐在期間中、救急車を利用した経験はありませんでした。

病院の使い分け|総合病院とクリニック

わが家の3年間の受診は、家族合計で20回ほど。風邪が最も多く、ほかにコロナ、歯の治療、食あたり、目・肌のトラブル、中耳炎など、内科・歯科・眼科・皮膚科・耳鼻科を受診しました。子どもは熱を出しやすく、子供を連れて行くことが多かったです。

選択肢は大きく2つ、規模の大きい総合病院小規模のクリニックです。わが家の使い分けはこうでした。

  • 総合病院:皮膚科・眼科など特定の専門科の受診、入院など症状が重いケース
  • クリニック:一般的な風邪(コロナ含む)など日常の受診

総合病院は待ち時間が非常に長いことが多く、子どもの発熱などではクリニックをメインに使っていました。日本でも似た使い分けをされている方は多いと思いますが、結果として、我が家はマレーシアでも同じ感覚で医療機関を利用しました。

あくまでも個人の経験ですが、総合病院・クリニック共に予約可能ですが、予約していても総合病院では、待ち時間が非常に長いです。クリニックの方が速やかにご案内いただけることが多かったです。

わが家が利用した病院・クリニック(日本語対応情報つき)

実際にわが家が利用したことのある医療機関を紹介します。いずれも、日本語スタッフの方がいらっしゃり、言葉の面で困ったことはありませんでした

総合病院

クリニック

歯科

  • CK Chang Dental Clinic:医師が日本の大学の歯学部出身で、日本語が話せます

クアラルンプールには、このように日本語が通じる医療機関(日本人通訳や日本語を話せるスタッフがいる施設)が複数あります。子どもの症状を英語で正確に伝える不安がある方も、心配しすぎなくて大丈夫だと思います。

なお、外務省HPに、マレーシアの医療・保健事情と邦人がよく利用する医療機関(日本語対応の可否も含む)が整理されています。日本語対応ホットラインの情報もこちらに掲載されているので、赴任前に必ず一度目を通しておくことをおすすめします。

外務省「世界の医療事情(マレーシア)」

受診の流れ|日本とほぼ同じ。ただし薬は病院でもらう

受診は、飛び込みでも診てもらえるかもしれませんが、予約をして行くのが確実です。

受付→検査・診察→会計→薬の受け取り、という基本的な流れは日本と変わりません。ひとつ違うのは、マレーシアでは基本的に医薬分業がされておらず、診察を受けた病院・クリニックでそのまま薬を出してもらいます

子どもが入院したときの話

印象に残っている体験をひとつ。

子どもが吐き気をもよおす症状があり、大きな総合病院を受診したところ、脱水症状が見られるとの診断でした。点滴を受け(これでかなり回復しました)、経過観察のため1日入院することになりました。

驚いたのは入院部屋です。私立の大きな病院でしたが、全室個室で広く、まるでホテルに泊まるかのような雰囲気でした。「子どもが海外で入院」と聞くと不安になると思いますが、少なくとも設備・環境の面では、日本と遜色ない(むしろ豪華なほどの)環境でした。

ひとつ、正直な感想もお伝えします。あくまで個人の感想ですが、このケースについて日本での感覚からすると入院までを要したのは若干大げさだったようにも思えます。(日本で受けていたら点滴を打って日帰りの感覚です。)現地の私立病院では、度々、こうしたやや手厚すぎると感じる対応を受けました。(自由診療であることが影響しているのかもしれませんが、根拠のない個人の想像です。手厚く慎重に診てもらえる、という見方もできます。)

いずれにせよ、過剰気味の対応もありうるという想定で、しっかり備えておくことが必要だと思います。

医療費と保険の備え|民間保険と「海外療養費」

前述のとおり、マレーシアは自由診療で、私立病院の医療費は高額になりがちです。我が家では、医療費への保険の備えとして、民間の海外赴任保険と、日本の公的保険の「海外療養費」の二段構えで対応しました。

民間の海外赴任傷病保険(海外赴任保険)

海外赴任傷病保険(海外赴任保険)への加入は、有効な備えになると思います。わが家は職場から案内された海外赴任保険に加入しました。

保険には様々な種類があり、大きくはキャッシュレス対応のもの(その場の支払いが不要。保険料は高め)と、立替払い後に請求するもの(保険料はキャッシュレスより低め。一旦立替が必要。)があります。ご家庭の状況にあわせて、赴任前に内容をよく確認して選ぶ必要があります。

日本の公的保険の「海外療養費」も知っておく

勤務先の健康保険組合等に継続加入している場合(被保険者資格が継続している場合)は、一般的に、日本の公的医療保険制度に基づく海外療養費の請求が可能とされています。(所属の健康保険組合に要確認です。なお、現地法人への出向などで健康保険組合を退会するケースでは前提が変わります。)

一般的な請求の流れは次のとおりです。

  1. 医療機関で、いったん全額を支払う
  2. 医療機関から診療内容明細領収書明細を取得する(通常は支払い時に入手)
  3. 海外療養費支給申請書を、必要書類とともに加入先の健康保険組合に提出する
  4. 健康保険組合の審査で認められれば支払われる

ただし、重要な注意点があります。

  • 支給対象は(日本での)保険適用診療のみ日本で自由診療扱いのものは対象外です
  • 支給額は、日本で同じ治療を受けた場合の保険診療相当額の7割(日本国内と同様、3割は自己負担)
  • 必要書類には各種明細の和訳を求められる場合が多いようです
  • 海外から郵送等で請求できるか、(一時)帰国時に請求できるかなど、運用は健康保険組合により異なります

つまり、公的保険でカバーされるのは「保険診療相当額の7割まで」。残りの3割については、民間の海外赴任保険で備える必要があります。また、民間保険についても、対象となる診療内容・薬について、事前の確認が必要です。(また、自由診療を保険で備えたいのであれば、対応している民間保険を探す必要があります。)

制度の実際の運用は加入先によって異なるため、赴任前に人事課等を通じて、所属の健康保険組合の運用ルールを確認することが必須です。

歯科の海外療養費は「材質」に注意

海外療養費の請求に関する歯科ならではの留意点として、被せもの等の材料は日本での保険診療対象の素材である必要があります(材質証明の提出を求められることが多いようです)。

先に紹介したCK Chang Dental Clinicは、医師が日本語を話せるだけでなく、日本での臨床経験があり、日本の保険診療についてもよくご存じな様子です。日本人がよく利用される所以は、このあたりにもあるように思います。

予防接種は「トラベルクリニック」で計画的に

医療の備えとして、予防接種にも触れておきます。

渡航にあたっての予防接種は、事前にトラベルクリニックを受診して、計画的に済ませる必要があります。

また、子どもの定期予防接種については、渡航前・現地接種・一時帰国中・帰国後というタイミングが選択肢になろうかと思います。こちらもトラベルクリニックで接種計画を相談するとよいと思います。本記事で紹介したクリニックを含め、現地のクリニック等で接種可能なワクチンもありますので、事前に確認しておき、現地接種もオプションに含めて検討すると選択肢が増えるかと思います。

歯科の話|焦って親知らずを抜かなくてよかった

余談ですが、歯科について。

わが家は「海外で歯医者は不安」と考え、渡航前に焦って親知らずを抜いてから赴任しました。でも実際には、上述の通り、日本の歯学部で学んだ日本語の話せる歯科医師がいるクリニックがあり、歯の治療で困ることは全くありませんでした。今思えば、焦って抜く必要はなかったなと思っています。

渡航前の歯のメンテナンス自体は良いことだと思いますが、「マレーシアでは歯科にかかれない」という前提で無理をする必要はなかったです(あくまで個人の感想です。)。

赴任前に備えておくべきこと|まとめ

3年間の経験から、医療面の主に備える点は次の4つです。

  1. 私立病院を把握しておく:国公立との格差が大きいため、自宅近くの私立病院・日本語対応クリニックを事前に調べておく(外務省サイトが出発点として最適です)
  2. 私立病院の救急車番号を控える:999(日本の119に相当。)に電話すると、自動的に国公立の病院に搬送されます。私立病院独自の救急番号を複数調べて、家族で共有しておく
  3. 保険を二段構えで備える:民間の海外赴任傷病保険は医療費への備えとして有効。あわせて、健保継続加入なら海外療養費が請求できる可能性があるため、赴任前に人事課等を通じて健康保険組合の運用ルール(請求方法・必要書類等)を確認しておく。
  4. 予防接種はトラベルクリニックで計画的に:渡航前の接種計画に加え、子どもの定期接種は渡航前・現地・一時帰国・帰国後のどこで打つかを計画しておく

最後にもう一度。クアラルンプールの医療事情は、日本と比較しても遜色ないと感じられるほど充実していました。わが家は3年間で20回ほど病院にかかりましたが、困ったことはありませんでした。適切に備えたうえで、必要以上に不安にならず、赴任生活をスタートしていただければと思います。

この記事が、同じような境遇にいる方にとって少しでも参考になれば嬉しいです。

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